あの子と私
あの部屋って……お母さんが凄く大事にしていて、私は一度も入った事のない、あの部屋……?


日当たりがよくて『アリスが大きくなってお嫁に行ったら、お父さんとお母さんで使うのよ』って、嬉しそうに話してた。

私は入った事もないのに、あの子があの部屋を使うの?

少しだけモヤモヤする気持ちを掻き消して、泣いている母親に視線を向ける。


「ねぇ…アリス……。あの部屋を…あんな今日来たばかりの小娘に使わせるなんて……」

「……」

「私達より…あの小娘の方が大事みたいじゃない!!」


母親はそう言って思いきり床を叩きつける。

私は何て言ったらいいのかわからなくて、黙ったまま下を向く。

こんな時はいつも何を言えばいいの分からないんだ……。


母親が鼻を啜る音と、時計の音だけが聞こえ、少しすると父親が来て言った。


「真雪はアリスと同じ高校に行かせるよ。その方が真雪も安心だろうから」

「…貴方っ!!」


……同じ高校?


「アリス…。真雪はね、たった一人の母親を亡くしたばかりなんだ。平気な顔をしてると思うけど、寂しいはずだ。仲良くしてやってくれ。頼むよ?」

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