【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。
「でも実際、伊藤さん鈴のこと気に入ってるよね」
騒ぎが収まった放課後、部活の準備をする亜由に言われ、私は小さく首を振る。
「誰にでもあんな感じだよ。優しいもん」
「そりゃ、学校の王子様だし。皆に優しいけど、鈴には特別優しい感じするよ?」
昨日勢いで恋愛成就なんて言ってみたものの、正直、自分が恋愛するなんて想像もつかない。
「お似合いだと思うけどね」
そんな言葉を並べられると、決まって浮かぶのは、お兄ちゃんとお姉ちゃんの仲の良さそうなやりとりだった。
私にとって、「お似合い」とは、あのふたりの代名詞。
私と伊藤さんがお似合い……?
思わず自分が付き合っている姿を想像するけど、上手く想像することができず、どうしてか昨日の神社で会った男の子の顔が浮かんだ。
「…え」
その衝撃に、戸惑いの声を出してしまう私。
亜由は突然呟いた私に、驚いて顔を見つめる。
「あ、いや…。なんでもない」
亜由は、少し不思議そうだったけど、すぐに話を元に戻した。
「で、どうするの大会!見に行くの?行くなら私も連れてって~先輩見たい!」
私よりもずっとキラキラして楽しそうな亜由に、私は小さく頷く。
マネージャーにもサッカー部にもそんなに興味はないのが本心だけど、断る勇気も理由もないし、きっと行くことになるんだろうな。
そう思いながら、私は帰る準備を進めた。