【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。
#5
「鈴、お疲れ様。」
次の日は、階段の下で、待ち合わせをした。
まだ見なれない制服を着て現れた奏に、小さく手を振って応える。
男の子と待ち合わせをするなんて、初めてで少しそわそわしたけれど、そんな緊張なんて一瞬で、
会ったらすぐに、奏の穏やかな雰囲気に包まれて、身体の力がふっと抜けた。
「普段、鈴はなにしてるの?」
「んー…?特になにも…。ごろごろして漫画読んだり動画見たり…?」
待ち合わせをして数分。神社へ続く階段に腰掛けて他愛ない会話を続ける。
気を抜いて会話をしていたから、あまりにも情けない毎日をありのままに伝えてしまい、私は突然恥ずかしくなった。
「あ、でもほら、友達がオフの日は一緒にカラオケ行ったりするよ?休日もカフェとか!」
慌てて取り繕うように言葉を紡ぐと、奏は穏やかに笑っていて、なんだか焦っていた自分がバカバカしくなった。
ふふ、と小さく笑いをこぼして、またのんびりと会話を重ねる。
「奏は?何してるの?」
「俺ー?俺はー…勉強?かな。」
「えー!?やっぱ優秀な高校は違うね」
「まあね、頭いいから」
揶揄うように呟くと、同じように少し冗談交じりな言葉を重ねてくれる。
「え、じゃあ数学得意だったりする?」
「うん、理系だし。比較的得意な方かも」
私は、予習の範囲でどうしても分からない問題があったことを思い出しそれを口にした。
「教えてよ、明日数学持ってくる!」
「えー、いいけど。意外と真面目?」
「意外とって何よー!!!」
奏と話す時間は、学校に居る時とは違う、
何も考えずに好きな事を言って笑える、最高の時間だった。