【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。

少し後悔を浮かべながら歩いていると、足元にボールが転がって来た。


「サッカー部？蹴り飛ばしてやれ」


そんな乱暴な事を言う亜由に

「えー？コントロール全然ないけど蹴ってみる？」

と冗談を返す。


「確かに鈴やばそう。私が蹴ってやろっかな」

「わー、スーパー運動神経ウーマンだあ」


ふざけたやり取りをしている間に、ボールの持ち主らしき体操着の男の子が駆け寄って来た。


「ごめーん！」


遠くから走って来たのは、学校でも人気なイケメン先輩、伊藤さん。


「待って、伊藤さんじゃん、やば無理私ほんと無理。」


さっきまでの威勢が嘘みたいに、さささっと後ろに下がっていった亜由。

取り残された私はボールを抱え、後ろに下がった彼女をじとりと見つめる。


「部活、お疲れ様です。」

「ありがとう、鈴ちゃん」


大して関わりのない後輩である私の名前までどうして把握できるのか。

そんなところも人気の秘密なんだろうと、勝手に納得する。


ボールをそっと渡すと、伊藤さんは、爽やかな笑顔でお礼を言った。


その笑顔に、後ろの亜由は何か攻撃でも喰らったかのように頭を抱える。


「あはは、なんか苦しそうだけど大丈夫？」


ふざけた動作だと伝わってしまう亜由の行動に、伊藤さんは可笑しそうに笑い、

亜由は真っ赤な顔で、頭を下げた。


「本当に、近くで見るとかっこよくて喰らってしまいました。」

「あはは、なんだよそれ。バカだなー」


爽やかに笑って、ボールを持ちグラウンドへと帰って行った伊藤さん。

グラウンドでは、男の子たちが固まってこちらの様子を眺めていた。


「…あんな爽やかな”バカ”初めて聞いた」

「やっぱ最強、推せるー！」


伊藤さんの余韻に浸る亜由に、私は笑みを零しながら、

未だ視線を感じるグラウンドにペコリと一例をして校庭を後にした。