【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。
「いるかなって思ってたから」

「いたね」

「今日土曜日だよ?」

「ん-、いろいろあって。」


曖昧に笑う彼の手には茶色の封筒が握られていて、私はそれに視線を落とす。


「そ…っか。」


触れてはいけないような空気ににこりと頷くと、奏は笑う。


「あ、今、空気読んだな?」

「え…あ、ううん?」


言い当てられて、咄嗟に首を振ると、彼はいたずらな笑みを浮かべた。


「俺にはわかっちゃうんです。その綺麗な笑顔が鈴の仮面だって。」


ぷにっと頬に触れた奏に、私は、何も言えなくなる。

奏は楽しそうに笑ってから、背を向けて数歩歩いた。


「俺、転校するんだよ。今日は退学手続き。」


封筒をひらひらとさせて落とされたその言葉に、私は驚く。


「転校…?どこに?」

「九州の方。親が離婚して、母親の実家に帰る。」


あまりにも遠い、その地域に、私は言葉を失った。
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