【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。

「わ、綺麗な神社だねー!」


長かった階段を上り終えると、真っ赤な鳥居が見えた。


「今若者に大人気だからって清掃入ったらしいよ。だから、超ぴかぴかなの」

「立派な観光地だね」


平日の神社とは思えないほど、確かに多くの人がいて、その大半が若い人たちだった。


「早速、お参りしよー!」


亜由は意気揚々と神社に乗り込んでいき、お参りの列へと並ぶ。

私は、お賽銭箱を見て少し陰る心にふたをして、隣へと並んだ。


「伊藤さんともっと話せるようになりたいし、部活も強くなりたいし、テストも良い点とりたいし、どうしよどうしよ…」

「そんないっぱい願ったら、いくら神様でも叶えきれないよ」


欲張りな亜由の独り言を聞いて笑っていると、あっという間に自分達の番が来て、お賽銭箱に小銭を投げ入れる。


目の前にして、何を願おうかと考えながら目を閉じた。

すぐに、脳裏に浮かんだのは、二人の男女の優しい笑顔。


…他、他の願い……。


脳を動かそうとしても、なにも思い浮かばない。


そして結局私はその二人の笑顔を浮かべ、何も願うことができないまま、目を開けてしまった。


目を開けると、既に隣に亜由の姿はなく、列から少し離れた場所で私を待っていた。


「ごめんごめん」

「何だ鈴、長かったじゃん!熱い願い事会ったんだ!?」


亜由の嬉しそうな笑顔に、私は何とも言えない気持ちを隠すように笑い返した。


「そうだ!お守りも可愛いんだって!ちょっと見て行こ?」


何を願ったかなんて下世話な事は聞かない。

願い事は、口にすると叶わなくなってしまうから。

静かに、私の願い事が叶うことを願ってくれている。


さっきの満面の笑みから感じられる、亜由の綺麗な心が温かくて、少し苦しかった。
< 5 / 40 >

この作品をシェア

pagetop