冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる
 狂おしいほどの愛情はなくとも、ゆっくりと育んでいけばいいと思っていた。しかしながら、描いていた幸せな未来はいとも簡単に崩れ去った。

(わたくしが稀代の悪女? ばかを言わないで。悪女というならヘレンのほうじゃない)

 ルーリエは悪女だ、と吹聴していたのはヘレンだ。
 最初は、男好きで有名な彼女の話を誰もまともに取り合わなかった。
 けれども、ヨハニスがヘレンと仲良く話す様子が多くなってから雲行きが怪しくなった。次第にヨハニスは自分の婚約者を冷たくあしらい、周囲もそれに同調するようになったのだ。
 真実とは違う噂が社交界に拡散され、悪女伝説だけが一人歩きした。その結果、ルーリエは「稀代の悪女」とまことしやかに囁かれるようになった。

< 3 / 39 >

この作品をシェア

pagetop