冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる
(……やはり、納得がいかないわ。第一、ヨハニス殿下の態度もおかしいもの。穏やかに話す方だったのに、突然手のひらを返したように敵視してくるなんて。誰も……家族でさえ、わたくしの言葉に耳を傾けてくれなかった……。どう考えても不自然よ)

 だけどもう、自分には時間がない。残された時間はあまりにも短く、誰ひとり味方もいない状況で打てる手などあるはずもない。
 できることは女神に慈悲を請うぐらいか。
 それとも悪女らしく、呪いの言葉を吐きながら民衆に悪態をつくべきか。
 いずれにしろ、理不尽な人生の終幕だ。婚約者を横取りされただけでなく、悪女として裁かれるなんて。一体どこで運命の歯車は狂ってしまったのか。

(せめて来世は無難に生き延びたいわね……)

 翌日の澄み切った青空の下、ルーリエの命は儚く散った。

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