冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる
(……何よ、これ……。去年デビュタントで着たドレスじゃない)

 デビュタントの夜会では純白のドレスを纏うことになっている。現にルーリエの周囲にいる少女は全員が白いドレス姿だ。場慣れしていないせいか、皆そわそわしているのがわかる。どれもこれも、すべて過去の記憶と一致している。
 そこから導かれる結論にルーリエは声を失った。

(嘘でしょう……? 時間が、巻き戻ったと言うの? 本当に?)

 疑わしい思いでたたずんでいると、第一王子がこちらに向かってくるのがわかった。元婚約者の姿を見違えるはずない。さらさらの金茶の髪に金の瞳、適度に鍛え抜かれた体。
 彼はまっすぐ自分のもとにやってきて、ルーリエの手を恭しく取った。

「初めまして、美しいご令嬢。どうかあなたの名前を教えてください」
「…………。ルーリエ・カールストン、と申します……」
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