神さまよりもずっと

10.神さまに願ったのに

 がんばったけど。
 ホントにがんばったんだけど。
「落っこちちゃいました……」
 力なくそうつぶやくことしかできなかった。

 あんなに神さまに願ったのに。
 自信もあったのに。
 毎日少しずつ積み重ねた努力は、まるで泡のように消えて。
 なんともあっけなく、どん底につき落とされちゃった。

 小鳥遊(たかなし)部長は、
「そっか」
 と、静かにつぶやいたあと。
「なぁ、オーディションのときのセリフってどんなんだった?」
 え?
 わたしは涙目のまま、部長を見つめる。
「課題あったんだろ? せっかくだから聞かせろよ」
 かああっ、と自分の顔が真っ赤になる。
 オーディションのときよりも、はるかに心臓がドキドキ鳴ってる。
 わたしは、ゴシゴシとハンカチで涙をふくと小鳥遊(たかなし)部長のほうを向いた。

「わたし……」
 ダメだ、緊張で声がかたい。落ち着いて、落ち着いて。
「わたしは、この町が大好き。なぜなら」
 そう言ったとたん、涙がポロッとあふれ出た。

 泣いちゃダメ。泣いちゃダメ。ちゃんと言わなくちゃ。
「なぜなら、ここには」
 そう、わたしの前には。
「かけがえのない、あなたがいるから」
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