新 撰 組 終 末 記




 連れてこられたのは大きな部屋。



 長机が三つほど並んでいて、そこに先ほど島田と呼ばれたあの人が 飯を運んでいた。



 湯気はなく、作ってから少し時間が経っているのだろうか。



 …まあ、それでも、ご飯にありつけるだけで有り難いんだけど…。



 皆はいつもの定位置があるのか、どんどんと腰掛けていく。



勇「遠慮せず座られよ、雪乃殿」



 別に遠慮しているわけではないのだけれど…。 困った挙げ句、末席に腰を下ろした。



 隣には、沖田さんがいる。



総司「雪乃さんっ、先生も言っておられますし、遠慮せず食べましょ! 島田さんの料理、まあまあ美味しいんですよっ」



 人懐っこく、にこにこ と微笑んでいる。



歳三「まあまあっつうのはなんだ 総司。 島田さんに失礼だろう」



総司「はいっ、雪乃さん あーん!」



 そう言って、(あじ)のあんかけを匙で掬い、私の顔の前に出してきた。



 あ、あーん?! 生まれてこの方、してもらったことないから困惑する。



 こっ、これは素直に食べてもいいのかな…?



総司「ほーらっ、早く! 腕が ぷるぷる しちゃいますっ」



 みんな 微笑みながら、こっち見てるけど…。



『あ、あーんっ』



 パクリ、と口にすると 酸っぱいような、甘いような味が口に広がった。



 鯵の切り身と、きくらげ が、あん に絡まって美味しかった。



『お、美味しい〜…!!』



 思わず頬に手を当てて、そう言う。



 やっばい…!! こんなに美味しいなんて、!!



 今も昔も、味覚は変わらないんだなあ…。 なんか感動。



総司「んふふ、可愛いなぁ〜雪乃さん。」



 食い意地が張ってると思われたかな…。



 カーッと、頬が赤くなる。



総司「美味しいですって〜島田さんっ!」



 なっ、本人に言わなくても…!



魁「…ああ、聞こえた」



 食べる手を止めて、島田さんがそう言った。



 無表情で、眉一つ動かさないから、なんだか告白して振られたような感覚に陥って、余計に恥ずかしかった。



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