新 撰 組 終 末 記
夕餉を食べ終わると同時に、近藤さんに部屋に呼ばれた。
部屋には土方さんと、沖田さんもいた。
勇「さあ、座ってくれ。 雪景くん」
『は、はい…』
おずおずと、座る。
勇「先程、トシと、雪景くんの今後について話し合った」
ピリッと、緊張が走り、唾を飲んだ。
勇「その結果、また新たに副長助勤を増やすということに決めた」
……ん? どういうこと…?
勇「つまり、雪景くんに副長助勤となってもらいたいと思っている」
ふ、副長助勤…?! …え、いくらなんでも、ぽっと出の私に任せる…?
歳三「…とりあえず、てめぇが間者じゃねぇってことは理解した。 長州とかなら、もっと目立たねぇように寄越して来るだろうからな」
フンッ…と腕組みをする。 …一々突っかかってくるなあ…。
勇「現在 壬生浪士組には、計 9名の副長助勤がいる。 副長助勤といえど、そんなに気負うことはないさ。 …引き受けてくれるかな」
…正直、いきなり副長助勤に抜擢されるなんて思ってなくて吃驚したけど…。 でも、認めてもらえて嬉しい。
『…有り難き幸せ。 喜んで引き受けさせて頂きます。 会津の為、新撰組の為、お国の為に 精一杯、この身を持ちまして 尽くさせて頂く所存でございます』
三つ指をつけて、お辞儀をした。
総司「よかったですね、雪乃さんっ!」
歳三「…フンッ、精々死なねぇようにな。 …というか、刀何処だ?」
そういえば、と私に問いかけてくる。
『…持ってないです。 というか、持てないので』
だって、銃刀法違反だもん。
歳三「はぁ? どういうことだ」
…あっ、やっばい…。 未来から来たことは、誰にも行ってないのに。
『あ…いえ、間違えました。 無くしちゃったので…』
歳三「刀無くすたぁどういうことだ」
ああ、もう…どちらに転んでも、面倒くさい…。 いっそのこと、全部言ってしまおうか。
でもどうせ、頭やばい奴って思われるだけだよね…。 間者説も復活しちゃいそうだし…。
総司「まあまあ、雪乃さんは記憶喪失なんですから、そんなに怖い顔しなくても。 着物とか、袴とか、刀とか、買ってあげましょうよ」
歳三「チッ…ただでさえ、こちとら極貧生活なんだぞ…。 給料前借りだ」
『ええっ…?!』
そ、そんなぁ…。 まだ壬生浪士組のときは、雀の涙程のお給料だと聞いたことがある。 そこから引かれてしまえば、雀の涙すら残らないではないか。
…むしろ、借金になるのでは…?
歳三「当たり前だろ、何 買ってもらえると思ってんだ」
…しょうがない。 組長として過ごすのだから、いつまでもセーラー服のままで居るわけにはいかない。
総司「ふふっ、明日 平隊士に会う前に、買いに行きましょうか」
そういえば、道場で私の試合を見ていたのは、副長助勤クラスの近藤派だけだからなぁ…。
明日、挨拶するのか…。
『はい…』
しくり…と悲しんでいる私に苦笑いの近藤さん。
勇「これからよろしく頼もう。 雪景くん」
『…はいっ!!』
局長直々の激励に、気合いを入れ直した。