【完結】大人女子✕年下男子!あなたがだいすきです!可愛い年下わんこ君との恋人7日間契約
金曜日・少しのふたり時間
新人さんが、お菓子美味しかったと朝からテンションが高く話しかけられた。
お昼休みには、お菓子の話題で盛り上がり大人数でのランチになった。
プラベートの話などしてこなかった年下の社員が、美味しいお菓子のレシピを教えてくれたり故郷の話をしてきたり……ここ数日の変化に利佳子は驚きながらも嬉しく思う。
隆太朗のおかげ……?
そんな風に思いながら帰宅した。
弟は恋人のところへ行くと出掛けた。
元々、自由奔放な子だと思っているので寂しさはない。
一人でゆっくり、珈琲を飲んでマカロンを食べ隆太朗を待つ。
まずはメールがきて、数十分後……。
「明日から週末だから、今日も仕込みで遅くなっちゃって」
深夜の12時前に隆太朗はやってきた。
玄関を開けるとニコニコと立っている。
昨日眠るのも遅くなってしまったはず、少し疲れが見える気がした。
「無理しなくて良かったのに……」
「無理じゃないよっ! こんなんで無理って言ってたら、過去の俺に殴られる」
「え?」
「やっとこうやって、できるのに……」
玄関外で、ぎゅっと利佳子を抱き締める。
「ご近所さんに見られちゃうわ……」
「ご、ごめんなさい」
「……じゃあ、あがっていく?」
「いや、今日はもう行かないと……土日はもっと早いから」
寂しそうな子犬のような顔。
「そっか……」
利佳子の心にも、じわり滲む寂しさ。
「うん、ごめんね。せっかくの金曜日なのに……」
「いいのよ。予定なんかないし」
「あの……たまには土日も休みとれたり、できるから。希望出せば……だから」
隆太朗の心には、このお試しの先に未来があるんだろう。
「……そうなのね」
受け流した。
二人にはもう土日は来ない。
そう決めてある。
「へへ、キスしたかったな」
冷たく受け流した……つもりだったのに。
どうして、こんなに素直になれるんだろう。
素直な隆太朗の好意は。純白の砂糖みたいだ。
……甘く、じわり……胸に沁みる。
「……じゃあ、少しこっち来て」
玄関に隆太朗を引き入れる。
「ここなら……いいわ」
「利佳子……優しい~~ありがと」
ぎゅーっと抱き締められ首元に顔を埋められる。
……優しいんじゃない、この温もりを求めていたのは……。
サッと利佳子ブレインを起動させる。
違う、違う。
でも……抱き締められたら……ホッとする……。
「いい匂い……利佳子のにおい……好きだよ」
すりすりされると、本当にわんこのようだ。
柔らかい髪が可愛く思える。
「ん? 利佳子、なに笑ったの?」
「ううん……」
「へへ、なぁに?」
「なんでもないわ……ふふ」
意味のないやりとり。
でも、なんだかくすぐったい。
そっと口付けされる。
「幸せだな」
幸せ……幸せ。
これが幸せ……?
私なんかを抱き締めることが……幸せ……?
「ありがとう、行くね。明日も頑張ってくる」
「うん」
「もっかいキスさせて……」
ちゅっと唇が触れた。
「じゃあ、おやすみ」
「……おやすみなさい……」
隆太朗が去っていく。
幸せが去っていくようで、何故か胸が痛む。
これは切なさ、だ。
……もっと一緒にいたかった……?
でも、そんな事は認められない。
彼を玄関先に入れてしまった現実を、利佳子ブレインはエラーだと決めた。