【完結】大人女子✕年下男子!あなたがだいすきです!可愛い年下わんこ君との恋人7日間契約

「あ、課長デートですね~」

「えっ」

 更衣室で一緒になった新人さんに気付かれてしまう。
 
「なんか~メイクばっちりだし、服もかわいいー」

 若い子に可愛いと言われるような服ではない……とは思うのだが、正直に言えばそれなりに気を遣った服だ。
 隆太朗のパティスリーへ行った後に、ついお気に入りの店で秋の新作ワンピースを買ってしまった。
 
「もう、あんたはまた~! お友達じゃなくて課長なのよ!」

 事務員さんも着替えを終えて、新人さんを小突く。

「えへ、すみません~」

 てへっと舌を出す新人さん。
 こういうあざとさも、利佳子から見ると可愛らしい。
 こんな可愛さがあれば、私の人生なにか違った……?

「課長はぁ~~とっても綺麗で~私の憧れなんですよぉ~」

「えっ!? もう~いいのよお世辞も冗談も」

 驚いて目を丸くしてしまう。
 事務員さんにも聞いたが、本当に冗談のように思える。

「ええー!? そんな驚かないでくださいよぉー! 私、課長推しですよぉ!」

「何を言っているのよ。こんな地味おばさん」

「お仕事できて、綺麗で、みんな課長推しなんですよぉ」

「馴れ馴れしすぎるけど、あんたの言う事はまぁ合ってる」

「二人とも何を」

 新人さんの言葉に、事務員も頷く。

「前からかっこよかったけど、最近は恋しちゃってる課長がめっちゃ可愛く見えますよ!」

「……こ、恋……」

 カーン! とその言葉が利佳子ブレインを撃ち抜いたような衝撃だった。

 恋

 こい

 恋

 koi

 鯉

 鯉

 鯉来い来い来い来い!

 恋……?

「いい加減にしなさいよ! 課長が困っちゃってるじゃない」

「えへへ~すみません~でも、本当にそうだなって~」

 フリーズ利佳子。
 停止中。

「課長?」

「か、課長? す、すみません~怒らないでください~~!!」

 焦る事務員さんと、泣きそうになった新人さんを見て利佳子は再起動した。

「ハッ! あ、いいえ。あの……違うのよ」

 利佳子は首を振る。
 
「ち、違う……?」

「違うのよ。実はあの子は……弟のお友達でね……」

「そうなんですかぁーいいじゃないですかぁ~」

「ちょっとあの……ゲームみたいなものに付き合っているだけなの」

 利佳子は自分で言いながら、心臓が乱れるのを感じる。
 二人も驚いた顔をした。

「ゲーム~~ですか?」

「そう、若気の至りゲーム……みたいなものにね。ほほほ、あんな若いイケメン君と私が……どうにかなるわけ……ね? ないでしょ? じゃあお疲れ様」

「えぇ……ゲーム? そんなの……課長、私……あの……すみません……」

「何も謝ることはないわ。誤解をさせたのは私よ。ごめんね……。今日は彼と最後の晩餐なの、じゃあ行かなくちゃ」

「はい……でも私が課長の推しってことは変わらないですから! 憧れですから!」

 必死な顔でいう新人さん。
 ふふっと微笑んで、利佳子は『ありがとう』と言って更衣室を出た。

「……課長~~~」

「馴れ馴れしいけど、課長にはあんたの気持ちはきっと届いてるよ。これくらいハッキリ言わないとわからない人なの。ずっと『高嶺の鈍子(にぶこ)さん』って言われるくらい、仕事以外は鈍感な女性なのよ~」

「あのワンコくんイケメン……頑張ってほしいですね」

「そうねーあれはゲームなんかじゃなく相当本気だよね」

「ですです! 絶対そうですよ!」

 そんな二人の会話は利佳子は当然知らずに、駅へ歩く。
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