【完結】大人女子✕年下男子!あなたがだいすきです!可愛い年下わんこ君との恋人7日間契約
 ぼーっとしたままリビングに戻ると、利紀と目が合う。
 とんでもない提案をしてくれた弟。
 
「さっきも言ったけど、俺ももう大学卒業だし、姉ちゃんも自分の人生考えなよ」

「何言ってるのよ……」

「もう就職も決まってる成人男子の面倒を、見なくてももういいでしょ」

 利佳子が利紀を育てるために努力を続けたように、弟は精一杯勉学を頑張り就職も決まっている。

「俺は多分転勤あるし、姉ちゃんを1人にさせる方が心配なんだよね」

「何を言ってるのよ、人を老人扱いしないで」

「そういう意味じゃなくてさ~! いいじゃん隆太朗」
 
「いい子なのはわかってる! でも隆太朗君はあなたの友達で……何歳離れてると思っているのよ!」

「一回り? そりゃ年齢は離れてるけどさ、まぁお試ししてみなよ」

「もう……あんたって本当に、能天気の破天荒で困るわ……」

「いいじゃんいいじゃん! 天然二人の間には、破天荒がいなけりゃなんも進展しない! さ、また寝るかな」

「天然って誰のことよ」

「だから、二人共?」

 利佳子には天然だなんて自覚も言われた事もない。
 
「あ~あと恋愛系は苦手だろ」

「……それは、まぁ」

「……俺のせいなんだよな……」

「何言ってんの。私が仕事が大好きだっただけよ」

 ガチャガチャと片付け、背を向けながら利紀が

「姉ちゃん、ありがとうな。今まで、ずっとありがとう」

 とボソッと呟いた。

「なっ……何よ突然」

「へへっ、お互い幸せになんないとね。今度さ、彼女連れてきていい? 紹介したいんだ」

「利紀……も、もちろんよ! 嬉しいわ」

「へへ。じゃあ、おやすみ」

「えぇ……おやすみなさい……」

 リビングで1人ワインを飲み、チーズケーキをまた食べる。
 涙がハラリと溢れる。
 歳の離れた弟を育てるために頑張ってきた。
 もうとっくに大人になっていたんだな……。
 あの言い方だと、結婚も考えているんだろうか?
 嬉しい反面、寂しさも滲む。

「ピロリン♪」

 スマホが鳴った。
 隆太朗だ。

『今日はありがとうございました! 俺、天にも昇っちゃいそうです! 明日楽しみにしています! 料理頑張ります! ケーキはリクエストある? ゼリーでもクッキーでもいいよ!』

『お疲れ様です。今日はチーズケーキごちそうさまでした。明日は私も楽しみにしておりますが、どうぞご無理なく……』

 なんだか社内メールみたい、と打ち直す。

『今日はチーズケーキごちそうさまでした。明日は私も楽しみにしております』

「これでおかしくない……わよね」

 男性とのメールなんて何年ぶり?
 昔は、こんなメールアプリなんかなかった……と思う。

「あら、可愛いスタンプ」

 隆太朗からは嬉しそうに飛び跳ねるスタンプが届いた。
 弟の姉離れの寂しさが、少し慰められる気がした。
 でも、まだまだ利佳子ブレインは隆太朗を弟の友達で弟のような存在としか思えない。
 

 
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