❤️俺にお前の心をくれ~若頭はこの純愛を諦められない
健吾は後藤組との合併を既に済ませて、そのトップに君臨していた。

さえの不倫の証拠を突きつけて、離婚すると決めていた。

その頃、由梨は亮二と日本に帰っていた。

由梨の記憶は相変わらず、翌朝になるとリセットされていた。

それなのに、雑誌の男性、西園寺健吾のことだけは忘れていなかった。

翌朝、頭の中には健吾のことがしっかり残っているのである。

由梨は雑誌を片手に、西園寺事務所を訪れた。

(ここかな)

そこへ、裕也が事務所から飛び出してきた。

裕也は由梨と目が合うと、驚きを隠せない。

「姐さん、いえ由梨さん、ちょっと待ってください、今、組長を呼んで来ます」

裕也は慌てて、健吾を呼びに行った。

「く、く、く、」

「どうした、落ち着け」

「ゆ、ゆ、ゆ」

「はあ?」

「由梨さんが」

健吾はすぐにピンときた。

急いで事務所の出入り口を飛び出した。

由梨の姿はどこにもいない。

「由梨、由梨、どこにいるんだ」

健吾は大声で叫んだ。

由梨は木の影に隠れて、健吾の姿を目視した。

(あっ、夢に出てきた人)

夢のことも覚えていたのである。

由梨はそっと木の影から姿を現した。

「由梨」

健吾はじっと由梨を見つめた。
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