❤️俺にお前の心をくれ~若頭はこの純愛を諦められない
「お名前をお聞かせください、改めてお礼させて頂きます」

由梨はちょっと躊躇していた。

極道の人と関わりは持ちたくないのが本音だ。

でも、名前だけなら、それにもうすぐ引っ越すし……

「夕凪由梨です、私は大したことはしていませんので、お気になさらないでください」

由梨は足早に病院を後にした。

由梨はこの後父親の会社が倒産して、借金を払う人生がスタートしたのだ。

借金を払うため、必死に働いた。

闇金にも手を出した。

仕事も、住むところも転々とした。

他のことは何も考えられなかった。

そんな時、東條ホールディングスの仕事が決まり、返済の目処がたちそうだった。

質素な生活をしながら、なんとか人間らしい人生を送れる、そう思っていた矢先に、

会長との契約を持ち出されたのだ。

「君は相当の借金があるんだな、本来なら解雇を申し渡すところだが、我が社を辞めることは出来ないだろう、どうだね、息子のフィアンセとして契約してくれたら、今回の解雇件はなかったことにしよう」

(私は一生借金を払い続けて、一生会長に雇われる身なんだ)

その時から由梨の記憶はリセットされた。
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