❤️俺にお前の心をくれ~若頭はこの純愛を諦められない
「由梨、由梨」

由梨の声も聞こえず、手にも触れる感触がない。

健吾はガバッと起き上がり、部屋の中を見回した。

「由梨、由梨」

その時、部屋の外から声が聞こえた。

「失礼致します」

襖が開き、女将が入ってきた。

「西園寺様、おはようございます」

健吾は咄嗟に察知した、由梨は東條の元に帰ったのだと……

「女将、由梨は……」

「お連れ様でしたら、先程、おかえりになりました」

「そうか」

健吾は慌てる様子もなく、落ち着いていた。

予想はしていたのだ、由梨はもう健吾との最後の夜のつもりだったんだと。

(何でだよ、俺はそんなに頼りないのか)

「西園寺様、お連れ様からありがとうございましたとの伝言を承っております」

「わかった、色々世話をかけたな」

健吾は表に待機している車に乗り込んだ。
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