噂の絶えない彼に出逢って,私の世界はひっくり返る。
「ジュナさん,ジュナさん」
あの衝撃の告白騒動を起こした後も,桜井くんは懲りずに何度も私の目の前にやって来る。
おはよう,またね,その繰り返し。
適当に返しつつその大半を無視していると
『桜井が本気になった』
だの。
『それを断った女がいる』
だの
『付き合っている』
だの。
多くの噂が歪曲されながら広まっていった。
「おはよう」
「……おは」
っていうか,いい加減
「毎日毎日っ」
ふらりと,よろめく。
いきなり振り向こうとしたのが間違いだったのか,感情的になったのが間違いだったのか。
驚いている間に,桜井くんが私を支える。
それがまた,何とも言えない悔しさを生んだ。
「大丈夫?」
「だい,じょうぶ」
桜井くんのせいよ!
そう八つ当たりに叫びたい気持ちをぐっとこらえて,私は小さくお礼を口にした。