噂の絶えない彼に出逢って,私の世界はひっくり返る。
まむくんは,丁度桜井くんと初めて会話した日から,ずっと1人で寝込んでいた。
だけど,ようやく元気になったみたいで,とても嬉しい。
あれ……
「久しぶりに会ったからかな。なんだか身長が伸びた気がする。数年前までは私の方が大きかったのに」
やっぱり男の子は違うよね。
本当はたぶん,数日でそんな変化は訪れなくて。
だけど,すごく上に見える顔の位置に,今更なんだかおかしくて。
私はつい,くすくすと笑った。
桜井くんが来る度,緊張を余儀なくされていたから。
こんな風に,解れた感覚は余計に久しく感じる。
「え」
私はただの世間話のつもりだったのに。
まむくんは固くヒクついた声をだした。
「俺,デカイ?」
「え,ううん。普通くらい。なに? 大きいと嫌なの?」
細身で,優しくて,まむくんなら格好いいと思うんだけどなあ。
でも,そっか。
格好いいと,今以上に女の子が放っておかなくなって。
まむくんは,私の近くからいなくなっちゃうのかな。
何度か,覚悟したみたいに……
それは嫌,だなぁ。
「だって,かわいくない」