噂の絶えない彼に出逢って,私の世界はひっくり返る。

その答えに



「関わりたくありません」



私は今度こそそう立ち上がる。

カバンのヒモを肩に掛けて,彼から視線を外したまま,私は続けた。



「恋人の名前まで手にした人が,相手に期待しないなんてこと……あり得ないと思ってください」



それでもそれを与えるから,関係を持ってしまうから。

桜井律佳は大衆にクズだと呼ばれてしまうのだ。



「待って」



さっきはスカートの裾を引っ張った右手で,今度は私の手を捕まえる。

好き勝手に言いすぎた?

驚いて,私はつい無防備にもまた顔を合わせてしまった。

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