監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
 10分の休憩時間に入ると、私は財前先輩に呼ばれて廊下に出ることになった。

 なんとなく、雷牙に耳打ちされたときのことで罪悪感を覚えていたから、財前先輩の背中に向かって、先手必勝で頭を下げる。




「すみません…!」


「…なにがだ?」


「えっ…あ、あの、らい…108番とすこし、距離が近かったかなと…」




 受刑者にこっそり口説かれていることに対する、うしろめたさからくる罪悪感なのかな、と自分では考えてみたのだけど。

 財前先輩は眉ひとつうごかさずに私を見つめて、「たしかに」と言った。




「ああいったざれごとに耳を貸す必要はない。受刑者というのは、なにかわるだくみをしているものだ」


「は、はい、もうしわけありません!…あの、怒ったり、気分をわるくしたりは…?」




 なんとなく気になって尋ねると、財前先輩はただ目を細めて…すこしのあいだだまりこんでから、口を開く。
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