監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
「…あぁ。俺が嫉妬のたぐいをしたと言いたいのか?」
「えっ、いえ、その、えっと…」
「説明をしていなかったな。…俺には“愛”という感情が生まれつき欠如している」
「え?」
きょとんと、目を丸くした。
財前先輩は目を伏せて“説明”を続ける。
「俺が藤枝を愛すことはできない。藤枝も期待するな。…だが、その代わり極上のメリットを提供する」
「はあ…」
「衣食住に不自由はしないだろう。欲しいものもすべて与える。やりたくないことはやらせない」
「…」
ぱちぱちと、繰り返しまばたきをする。
財前先輩は目を開くと、めずらしく視線をそらした。
「…まぁ、すべて“正解”の模倣だが。ひとを大切に思う、やさしい行動とやらをまねすることはできる。望みがあれば言え」
このひと、なにを言ってるんだろう、と初めて思ったかもしれない。