監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
眉を下げながらの言葉に、うん?と首を傾げる。
「108番に、あんまり近づかないほうがいいと思う…景依ちゃんだから、大丈夫だと思うけど…変なうわさが、…ううんっ」
「うわさ?」
「なんでもないっ。気をつけて行ってらっしゃい」
「う、うん、ありがとう。行ってきます…」
どぎまぎしながら、兎杏に手をふって部屋から出た。
私が雷牙に恋しちゃったことは、万が一周りにバレたとき、一緒にかくしてたことで罰されないように、兎杏には言ってないんだけど…。
なんだか、胸がざわざわする。
大丈夫だよね、と自分に言い聞かせるようにして、私は刑務所棟に向かった。
朝の刑務作業で革工の監督をふりわけられた私は、雷牙に気があることを悟られないよう、理性的に業務へあたる。
と言っても、Verbrechenのようすに目を光らせるだけだけど。
油断なく、右に左に視線をうごかしていると、雷牙が作業の手を止めてひたいを押さえていることに気づいた。