監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
「あとは…ふむ。1週間まえから、2年の女子生徒が108番を好いているといううわさが流れているが、藤枝はこれに関して心当たりはないか?」
「…えっ…?」
いま、なんて言った?
どくん、と心臓がいやな音を立てて、暑さからくるものとはちがう汗が手のひらににじむ。
財前先輩は切れ長の瞳でじっと私を見つめた。
「先週1週間、先生方がひそかに目を光らせていたのだが、怪しい人物は見つからなかったようでな。おなじ2年として、藤枝から意見はないか?」
「っ、すみません、初耳で…」
「そうか。だが、藤枝も注意して見て欲しい。ただのうわさならかまわないが、万が一にも真実が混じっていればその生徒を退学にしなければならない」
「は、はい…」
どくどくと、心臓が重い音を立てている。
そんなうわさが、流れていたなんて…。
…もしかして、兎杏や雷牙が言ってたのはこれのこと…?
雷牙が最近、絡んでこなくなったのも…。
くらりとめまいがして、頭を押さえた。
財前先輩がこんなはなしをしたってことは、私は疑惑の目から逃れたってことだろうけど…気をつけなきゃ。
退学には、なりたくない。