監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「あ、はいっ」


「…108番がVerbrechen(フェアブレッヒェン)を連れて脱獄したこと、そんなにショックか?」


「っ、い、いえ…あの…」


「もともと問題行動ばかりだったろう。信用にあたいしない男だとわかっていたはずだが?」




 向かいから紫色の瞳に見つめられて、ぐ、と唇を引き結んだ。

 たしかにそう…あんな詐欺師なんて、信じるだけむだだけど…。




「でも、外に出たがったりはしない男でしたっ…それに、一部、真剣なところも…」


「…藤枝はやはり、真に受けすぎるな。108番も、藤枝のそんなところがあつかいやすいと見こんだのだろう」


「っ…!」




 うるっと、目頭が熱くなる。

 私、だまされてたのかな…?

 ぜんぶ、うそだったのかな…?


 でも、それならどうして私を利用して外に出なかったの?

 他に利用しやすいひとを見つけたから?

 ぜったい好きにならないって言ったのを信じて、見放したの?



 あの言葉を…熱い声を、視線を…私にふれる手を、信じたいのに。

 残された結果がこれじゃ、信じられないよ…っ。

 ばか雷牙…!



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