監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
運命の一手

帰ってきた男



 心の防衛手段として、“忘れる”という行為は多くあげられるものだと思う。

 大事件が起こっても時は止まらずに進み、2学期が始まった。

 監獄学園で集団脱獄が起こったことは、ニュースでも取り上げられ…私たちは失態を胸に抱えながら生活している。


 雷牙(らいが)のやったことから目はそむけられない…。

 だから私は、雷牙の気持ちがうそだったと、私の気持ちもだまされて芽生えた一時の気の迷いだと思って、忘れることにした。

 …もしかしたら、数日間の空白の記憶も、とてつもなく心が傷つく出来事があって、脳が忘れさせたのかもしれない。




「では財前(ざいぜん)先輩、お先に失礼します」


「あぁ。気をつけて帰るように」


「はい」




 笑って答え、生徒会室を出る。

 財前先輩と辺春(へばる)先生との共同生活は2週間で終わりを告げた。

 私の素行に特に問題はないと判断されたから。
< 178 / 289 >

この作品をシェア

pagetop