監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「お母さんもあんまりあのひとを甘やかしちゃダメだよ。受刑者なんてすぐ調子に乗るんだから」


《…えぇ、わかったわ》




 お母さんの、こまったように笑う顔が目に浮かぶ。

 本当に、お母さんが1人になってるあいだに、あのひとが仮釈放をもらって帰ってこないかだけが心配。

 いまでも離婚してないくらい、お母さんって甘いし。


 はぁ、とため息をつくのをこらえて、私はお母さんとはなし続け、何分か経ったあとに、もう遅い時間だから、と電話を切った。




「んー…!」




 トイレから出て、ぐっと伸びをしながら部屋にもどる。

 カーテンを閉めて、明かりの下でノートを広げていたルームメイトは、顔を上げてふにゃりと笑いかけてくれた。




「あ、景依ちゃん。電話、終わった?」
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