監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。

 授業まえの作業時間が終わって、廊下に出るVerbrechen(フェアブレッヒェン)の見張りを他のGebot(ゲボート)生に任せつつ、革工(かくこう)工場内の見回りをする。

 ざっと作業場を確認していると、108番の持ち場に異変を見つけた。


 木槌の持ち手に傷が入ってる…しかもこの傷、するどく入ってて木が立ってるから、へたしたら…!


 私はすぐに廊下に出て、108番の姿を探した。




「108番!手を見せなさい」


「ん?」




 のんびりふり返る108番の手を取って、その手のひらをくまなく見る。

 すると、ちいさな傷があった。

 きっ、と見上げれば、きょとんとした視線を返される。




「医務室、行きますよ!」


「は?」


「はやく!…108番が怪我をしているので、手当してきます」




 Gebot(ゲボート)生に報告して、108番の手を掴んだまま医務室へ向かった。

 目的地が近づいてあたりに人がいなくなると、大人しくひっぱられていた108番がはなしかけてくる。
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