監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


 耳に吹きこまれた声は、本能を掌握(しょうあく)する絶対的王者のそれで。

 勝手に体の力が抜けて、逆らえなくなった。

 へたりと、108番のひざの上で、私の体は静止する。


 …きっと、あのとき。

 本能が覚えちゃったんだ。

 108番…大門(だいもん)雷牙(らいが)は、私より上の存在だって。




「よし…大人しくなったな」




 口角が上がっているような声でつぶやいて、108番は「景依」と私の名前を呼ぶ。




「俺に敬語は使うな。…それから、俺のことは名前で呼べ」


「むり…私は刑務官です」




 真正面から私を見つめて、ポニーテールにした髪をすくい取った108番は、笑みを浮かべながら毛先を口元に運んだ。




「じゃあ、“2人のときは”で許してやる。景依が言うことを聞かないなら、俺は今後一切看守に従わない」


「…」
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