素直になるまで
大切だから
あたしも隼人に続いて中に入って行った。
部屋に着き、隼人がベッドに座った。
あたしは床に座ったら変かな…とか思い、隼人の隣に座った。
「あのさ…さっきも言ったけど、やっぱり夏希に誤解されたまま別れるのは嫌なんだ。
だから、俺の話聞いてほしい。」
「わかった。なに?」
「俺は夏希が思ってるような男じゃない。
確かに、そんなような態度をとった俺が悪かった。
でも、それはただ恥ずかしかっただけで、俺は決して夏希が嫌いな訳じゃないから…
信じて…」
隼人はそう言ってあたしを優しく抱きしめた。
涙が流れてきた。
「じゃあ、なんでキス以外何もしてこなかったの?」
「それは夏希が……
大切だから……
だから手、出せなかった。
夏希が嫌いだからとかじゃないから…
正面から向き合うことも、一緒の空間にいることも、俺にとってはすっごく緊張することなんだ…
無愛想な言い方も、2人でやれることじゃなくて、1人でゲームをする事とかも、全部、全部、夏希が大好きだから、恥ずかしくて………素直になれなくて…
だから、許してくれないかな………」
「隼人………
そんなに思ってくれてるなんて…ごめん」
「これからは素直になるから。
だから、だからさ………」
隼人が全て言い切る前にあたしは隼人の口を塞いだ。
隼人…あたしだって隼人と同じ気持ちだから…
ゆっくり唇を離し、隼人の目を見た。
隼人の目には、あたしと同じように涙が溜まっていた。
すーっと、一筋の涙があたしたちの目からこぼれ落ちた。
―END―