幽霊令嬢と『視える』王子様~婚約者を奪われたので自殺した令嬢、霊媒体質の第二王子にまとわり憑く~
エピローグ
「殿下、以前から何度も申し上げておりますが、くれぐれもメルヴィナの事は大切にして頂きますようお願いいたします」
アンブローズ侯爵家の首都屋敷を訪れたギルバートは、応接室に通されるなり、メルヴィナの父、リチャード・アンブローズから圧力を掛けられた。
デビュタント・ボールでメルヴィナへの気持ちを伝え、求婚者として名乗りを上げて以来、顔を合わせると毎回こうだ。
酷い時は彼女の祖父や母親も参加して何度も念を押してくる。この場にいないという事は、何か所用があって二人とも不在なのだろう。
メルヴィナは元婚約者のせいで一度自殺を図っているから、侯爵家の人々の気持ちは理解できるし、彼女が家族に愛されている証でもある。
だからギルバートは、真摯に対応すると心に決めていた。
「わかっております。私の全てを掛けて幸せにすると誓います」
「その、大変申し上げにくいのですが、殿下のご家族との関係には特に気を付けて頂けましたら……。人格者でいらっしゃる王室の方々が、メルに何かなさると思っている訳ではないのですが……」
言いにくそうに口ごもるリチャードに、ギルバートは穏やかな笑みを向けた。
「義姉と他の家族との関係を見ている限り大丈夫だとは思いますが、もし何かあった場合は、私は全面的にメルの味方をします。神と自分の名に誓います」
キッパリと宣言すると、リチャードはため息をついて肩を落とした。
「殿下には失礼な事を申し上げているのは重々承知しているのですが、メルヴィナの事になると、どうしても不安が拭えなくて……申し訳ございません」
「いえ、お気持ちはわかりますのでお気になさらないで下さい。もし私がリチャード殿の立場だったら同じような状態になると思います」
「そう仰って頂けるとありがたいです」
リチャードがそう告げた時だった。応接室の扉が外からノックされる。
リチャードが入室を許すと、ギルバートの待ち人が現れた。
「お待たせ致しました、ギル様」
メルヴィナだ。
彼女の姿を視界に入れたギルバートは、目を細めて微笑みかけた。
「それは私が先日贈ったドレスだな。よく似合っている」
発言は本心だ。一緒に王室御用達のドレスメーカーに赴いてギルバートが見立てたスモーキーピンクのドレスは、彼女の透き通るように白い肌を引き立てていた。
「ありがとうございます、ギル様」
恥じらうように微笑みを返すメルヴィナは、凶悪な愛らしさだった。
デザイナーが提出してきたデザイン案の中からギルバートが選んだのは、胸元と腰に薔薇の飾りがあしらわれたドレスである。
ピンク系で花が主役のそれを選んだのは、メルヴィナには照れくさくて言えていないが、彼女が妹のミリアムを助けてくれた時に、褒美として望んだ花束代わりのつもりだった。
本当は療養中に見舞いの花を贈りたかったのだが、迷惑が掛かってはいけないと思い自重した。
だけど、想いが通じた今はもう遠慮はしなくていい。自分が贈ったものを身に着ける彼女を見ると、予想以上に所有欲が満たされた。
メルヴィナは幼馴染みと比較して、自分の容姿を地味だと卑下するが、ギルバートから見たメルヴィナは清楚で非常に魅力的だ。
茶色の髪は艶やかで触り心地が良さそうだし、灰色の瞳は光の加減によって銀色にも見えるのが神秘的で美しい。
彼女のどこに惹かれたのかと聞かれたら、容姿の要素が全くないとは言えないが、外見よりも内面が気に入ったからだと断言できる。
今思い返せば、他人に迷惑をかけないよう気を配り、ひっそりと佇む姿に同情心が湧いたのが始まりだった。
一緒にいて不快感がなく、むしろ楽しいと思える性格に、可愛らしい顔立ちの持ち主だったから、好意を持つようになるのに時間はかからなかった。
「準備が出来たのなら向かおうか。少し早いが、先に案内したい場所があるんだ」
ギルバートは席を立つと、メルヴィナに近付いた。
今日は宮殿にメルヴィナを連れて行き、ギルバートの家族と引き合わせる予定になっている。
王侯貴族の婚約は、互いの家の家長の承諾を取り付けなければ成立しない。
メルヴィナの祖父と両親の説得は終わり、王家側の内定もほぼ取れてはいるのだが、最終的な結論を出す前に、面会の機会を持ちたいと言われたのである。
ちなみに、両家の調整はかなり大変だった。
現在の王家は成年男子の王族が少なく、ギルバートがアンブローズ侯爵家に入る訳にはいかなかった為である。
メルヴィナはアンブローズ侯爵家の相続人としての権利を保有したまま王家に入り、ギルバートとの間に生まれた子供を侯爵家の後継にする、子が産まれる前にリチャードに何かあれば、メルヴィナが爵位を相続する、など、様々な取り決めがなされた。
◆ ◆ ◆
リチャードに挨拶をして別れ、メルヴィナと一緒に屋敷を出たギルバートは、玄関口で待機していた王家の馬車へと向かった。
そしてメルヴィナを乗せるために手を貸して眉をひそめる。彼女の手は冷え切っていた。
「お前、手が冷たすぎるぞ。もしかして緊張してるのか?」
先に馬車に乗り込ませてから尋ねると、恨みがましそうな目を向けられた。
「緊張するに決まってます。これから偉い人達に会うんですから」
「もし意地の悪い事を言われたとしても、すぐ助けてやるから安心しろ。たぶんそんな事はないと思うが」
メルヴィナの隣に腰を掛けながら、ギルバートは家族の顔を思い浮かべた。
女性陣は好奇心いっぱいで、父と兄はそれを若干引いた目で見つつも楽しみにしていたから、恐らく特に問題なく顔合わせは終わるはずだ。
アンブローズ侯爵の孫娘であり血筋に問題はないし、何よりも神気覚醒者なのが大きい。メルヴィナは自分の価値に無自覚だが、どこの貴族家でも欲しがる血統と能力の持ち主である。
幸い兄の所には王子王女が三人いるから、早く子供を産めという内外からの圧力がメルヴィナにかかる事もない。
むしろ、子供関連の圧力をかけられるとしたらギルバートの方だろう。
「宮殿に着いたらまず厩舎に行くぞ」
ギルバートが到着後の予定を告げると、メルヴィナはぱあっと顔を輝かせた。
「もしかして、フラウに会わせてくださるんですか」
「ああ」
この顔が見られただけでも早めに迎えに来た価値がある。ギルバートは口元を緩めた。
フラウの所に行けばもっとメルヴィナが喜ぶ秘密があるのだが、それは到着までのお楽しみだ。
「フラウは元気ですか?」
「相変わらず厩務員から可愛がられてるな。最近は空いてる馬房に専用の寝床を作ってもらって、そこで気持ちよさそうにくつろいでる事が多い」
「専用寝床!?」
「ああ。干し草製なんだが結構凝った作りになってて、かなり快適そうだ」
「わあ、見るのが楽しみです!」
フラウのお陰か、メルヴィナの表情から硬さが消えた。ギルバートは内心で安堵する。
「そういえば、叔父様から聞いたぞ。お前、結界神術の発動に成功したんだってな」
尋ねると、メルヴィナは頷いた。
「はい。でも、小さいのを張るのがやっとなんですけど」
「大きな進歩じゃないか。よく頑張ったな」
ギルバートが褒めると、彼女は嬉しそうに微笑む。
「まだ発動にすごく時間がかかるので練習中ですけどね」
「基本的に叔父様の護符を身に着けていれば安全なはずだが、何かあった時に使えるに越した事はないからな。護符は絶対に外すなよ」
ギルバートはメルヴィナの胸元から覗くロザリウムに視線を向けた。
これはミストシティ大聖堂内でしか作れない。作成には礼拝堂の最奥、祭壇の地下に湧く聖なる泉の水が必要になるからだ。叔父に頼るしかないというのが少し面白くなかった。
◆ ◆ ◆
馬車の中の雑談のおかげか、宮殿に到着した時のメルヴィナの手は温もりを取り戻していた。
その体温に、ギルバートは聖職者に変装して、侯爵邸を訪れた時の事を思い出す。
彼女はきっと知らない。魂の状態を確認するために生身の体に触れて、どれだけギルバートが嬉しかったかを。
どんなに惹かれても、生者と死者は結ばれない。
なぜ彼女は死者なのだろう。心の中の想いは封じるしかないと思っていた。
だけど彼女は生きていた。体に戻った彼女に触れ、ようやくそれを実感したのだ。
馬車を降りて厩舎に向かうと、メルヴィナは目を丸くした。
彼女の視線を追うと、寝そべるクリーム色の猫と、そのお腹に顔を埋める三匹の子猫の姿がある。
「えっと、フラウ……。えっ? お母さんになったの!?」
「ああ。一か月ほど前に」
「どうして教えてくれなかったんですか!」
メルヴィナはムッとした表情でこちらを責めてきた。
「お前の驚く顔が見たかったからかな」
「意地悪です!」
「教えても、一か月前はまだここに連れてこられる状況じゃなかっただろ」
宮殿に入るには許可がいる。それを指摘するとメルヴィナはぐっと黙り込んだ。
「それでも悔しいです……ギル様は生まれたての子猫を見たんですよね……」
「遠くから見ただけだ。近付くとフラウが威嚇してきたからな。今も子猫に触れるのは、あいつが特に信頼してる厩務員だけだ」
「そうなんですか? いいなぁ……羨ましい……」
メルヴィナはしょんぼりと肩を落とすと、フラウと子猫たちに視線を向けた。
予想通りの彼女の反応に、ギルバートは口元に笑みを浮かべた。
アンブローズ侯爵家の首都屋敷を訪れたギルバートは、応接室に通されるなり、メルヴィナの父、リチャード・アンブローズから圧力を掛けられた。
デビュタント・ボールでメルヴィナへの気持ちを伝え、求婚者として名乗りを上げて以来、顔を合わせると毎回こうだ。
酷い時は彼女の祖父や母親も参加して何度も念を押してくる。この場にいないという事は、何か所用があって二人とも不在なのだろう。
メルヴィナは元婚約者のせいで一度自殺を図っているから、侯爵家の人々の気持ちは理解できるし、彼女が家族に愛されている証でもある。
だからギルバートは、真摯に対応すると心に決めていた。
「わかっております。私の全てを掛けて幸せにすると誓います」
「その、大変申し上げにくいのですが、殿下のご家族との関係には特に気を付けて頂けましたら……。人格者でいらっしゃる王室の方々が、メルに何かなさると思っている訳ではないのですが……」
言いにくそうに口ごもるリチャードに、ギルバートは穏やかな笑みを向けた。
「義姉と他の家族との関係を見ている限り大丈夫だとは思いますが、もし何かあった場合は、私は全面的にメルの味方をします。神と自分の名に誓います」
キッパリと宣言すると、リチャードはため息をついて肩を落とした。
「殿下には失礼な事を申し上げているのは重々承知しているのですが、メルヴィナの事になると、どうしても不安が拭えなくて……申し訳ございません」
「いえ、お気持ちはわかりますのでお気になさらないで下さい。もし私がリチャード殿の立場だったら同じような状態になると思います」
「そう仰って頂けるとありがたいです」
リチャードがそう告げた時だった。応接室の扉が外からノックされる。
リチャードが入室を許すと、ギルバートの待ち人が現れた。
「お待たせ致しました、ギル様」
メルヴィナだ。
彼女の姿を視界に入れたギルバートは、目を細めて微笑みかけた。
「それは私が先日贈ったドレスだな。よく似合っている」
発言は本心だ。一緒に王室御用達のドレスメーカーに赴いてギルバートが見立てたスモーキーピンクのドレスは、彼女の透き通るように白い肌を引き立てていた。
「ありがとうございます、ギル様」
恥じらうように微笑みを返すメルヴィナは、凶悪な愛らしさだった。
デザイナーが提出してきたデザイン案の中からギルバートが選んだのは、胸元と腰に薔薇の飾りがあしらわれたドレスである。
ピンク系で花が主役のそれを選んだのは、メルヴィナには照れくさくて言えていないが、彼女が妹のミリアムを助けてくれた時に、褒美として望んだ花束代わりのつもりだった。
本当は療養中に見舞いの花を贈りたかったのだが、迷惑が掛かってはいけないと思い自重した。
だけど、想いが通じた今はもう遠慮はしなくていい。自分が贈ったものを身に着ける彼女を見ると、予想以上に所有欲が満たされた。
メルヴィナは幼馴染みと比較して、自分の容姿を地味だと卑下するが、ギルバートから見たメルヴィナは清楚で非常に魅力的だ。
茶色の髪は艶やかで触り心地が良さそうだし、灰色の瞳は光の加減によって銀色にも見えるのが神秘的で美しい。
彼女のどこに惹かれたのかと聞かれたら、容姿の要素が全くないとは言えないが、外見よりも内面が気に入ったからだと断言できる。
今思い返せば、他人に迷惑をかけないよう気を配り、ひっそりと佇む姿に同情心が湧いたのが始まりだった。
一緒にいて不快感がなく、むしろ楽しいと思える性格に、可愛らしい顔立ちの持ち主だったから、好意を持つようになるのに時間はかからなかった。
「準備が出来たのなら向かおうか。少し早いが、先に案内したい場所があるんだ」
ギルバートは席を立つと、メルヴィナに近付いた。
今日は宮殿にメルヴィナを連れて行き、ギルバートの家族と引き合わせる予定になっている。
王侯貴族の婚約は、互いの家の家長の承諾を取り付けなければ成立しない。
メルヴィナの祖父と両親の説得は終わり、王家側の内定もほぼ取れてはいるのだが、最終的な結論を出す前に、面会の機会を持ちたいと言われたのである。
ちなみに、両家の調整はかなり大変だった。
現在の王家は成年男子の王族が少なく、ギルバートがアンブローズ侯爵家に入る訳にはいかなかった為である。
メルヴィナはアンブローズ侯爵家の相続人としての権利を保有したまま王家に入り、ギルバートとの間に生まれた子供を侯爵家の後継にする、子が産まれる前にリチャードに何かあれば、メルヴィナが爵位を相続する、など、様々な取り決めがなされた。
◆ ◆ ◆
リチャードに挨拶をして別れ、メルヴィナと一緒に屋敷を出たギルバートは、玄関口で待機していた王家の馬車へと向かった。
そしてメルヴィナを乗せるために手を貸して眉をひそめる。彼女の手は冷え切っていた。
「お前、手が冷たすぎるぞ。もしかして緊張してるのか?」
先に馬車に乗り込ませてから尋ねると、恨みがましそうな目を向けられた。
「緊張するに決まってます。これから偉い人達に会うんですから」
「もし意地の悪い事を言われたとしても、すぐ助けてやるから安心しろ。たぶんそんな事はないと思うが」
メルヴィナの隣に腰を掛けながら、ギルバートは家族の顔を思い浮かべた。
女性陣は好奇心いっぱいで、父と兄はそれを若干引いた目で見つつも楽しみにしていたから、恐らく特に問題なく顔合わせは終わるはずだ。
アンブローズ侯爵の孫娘であり血筋に問題はないし、何よりも神気覚醒者なのが大きい。メルヴィナは自分の価値に無自覚だが、どこの貴族家でも欲しがる血統と能力の持ち主である。
幸い兄の所には王子王女が三人いるから、早く子供を産めという内外からの圧力がメルヴィナにかかる事もない。
むしろ、子供関連の圧力をかけられるとしたらギルバートの方だろう。
「宮殿に着いたらまず厩舎に行くぞ」
ギルバートが到着後の予定を告げると、メルヴィナはぱあっと顔を輝かせた。
「もしかして、フラウに会わせてくださるんですか」
「ああ」
この顔が見られただけでも早めに迎えに来た価値がある。ギルバートは口元を緩めた。
フラウの所に行けばもっとメルヴィナが喜ぶ秘密があるのだが、それは到着までのお楽しみだ。
「フラウは元気ですか?」
「相変わらず厩務員から可愛がられてるな。最近は空いてる馬房に専用の寝床を作ってもらって、そこで気持ちよさそうにくつろいでる事が多い」
「専用寝床!?」
「ああ。干し草製なんだが結構凝った作りになってて、かなり快適そうだ」
「わあ、見るのが楽しみです!」
フラウのお陰か、メルヴィナの表情から硬さが消えた。ギルバートは内心で安堵する。
「そういえば、叔父様から聞いたぞ。お前、結界神術の発動に成功したんだってな」
尋ねると、メルヴィナは頷いた。
「はい。でも、小さいのを張るのがやっとなんですけど」
「大きな進歩じゃないか。よく頑張ったな」
ギルバートが褒めると、彼女は嬉しそうに微笑む。
「まだ発動にすごく時間がかかるので練習中ですけどね」
「基本的に叔父様の護符を身に着けていれば安全なはずだが、何かあった時に使えるに越した事はないからな。護符は絶対に外すなよ」
ギルバートはメルヴィナの胸元から覗くロザリウムに視線を向けた。
これはミストシティ大聖堂内でしか作れない。作成には礼拝堂の最奥、祭壇の地下に湧く聖なる泉の水が必要になるからだ。叔父に頼るしかないというのが少し面白くなかった。
◆ ◆ ◆
馬車の中の雑談のおかげか、宮殿に到着した時のメルヴィナの手は温もりを取り戻していた。
その体温に、ギルバートは聖職者に変装して、侯爵邸を訪れた時の事を思い出す。
彼女はきっと知らない。魂の状態を確認するために生身の体に触れて、どれだけギルバートが嬉しかったかを。
どんなに惹かれても、生者と死者は結ばれない。
なぜ彼女は死者なのだろう。心の中の想いは封じるしかないと思っていた。
だけど彼女は生きていた。体に戻った彼女に触れ、ようやくそれを実感したのだ。
馬車を降りて厩舎に向かうと、メルヴィナは目を丸くした。
彼女の視線を追うと、寝そべるクリーム色の猫と、そのお腹に顔を埋める三匹の子猫の姿がある。
「えっと、フラウ……。えっ? お母さんになったの!?」
「ああ。一か月ほど前に」
「どうして教えてくれなかったんですか!」
メルヴィナはムッとした表情でこちらを責めてきた。
「お前の驚く顔が見たかったからかな」
「意地悪です!」
「教えても、一か月前はまだここに連れてこられる状況じゃなかっただろ」
宮殿に入るには許可がいる。それを指摘するとメルヴィナはぐっと黙り込んだ。
「それでも悔しいです……ギル様は生まれたての子猫を見たんですよね……」
「遠くから見ただけだ。近付くとフラウが威嚇してきたからな。今も子猫に触れるのは、あいつが特に信頼してる厩務員だけだ」
「そうなんですか? いいなぁ……羨ましい……」
メルヴィナはしょんぼりと肩を落とすと、フラウと子猫たちに視線を向けた。
予想通りの彼女の反応に、ギルバートは口元に笑みを浮かべた。