Lazy President

芹くんのことをマイペースな自由人だと思っていたけど、実は案外そうでもないのかもしれない。



良くも悪くも、相手を自分のペースに持っていく芹くん。



それは、芹くんなりの優しさと気遣いが含まれているのかも。



その事に気がついた途端、芹くんの隣がとても居心地のいい場所に思えてきた。



「…ううん、話せるよ。…芹くんなら、大丈夫な気がする」



「…そう。それは良かった」



私がそう言うと、芹くんも安心したように微笑んだ。



それを合図に、恐る恐る口を開く。



「…私は、望まれて生まれた子じゃないの」









お母さんとお父さんの仲が悪くなり始めたのは、いつ頃だっただろうか。



どこにでもいる普通の家族だったと思う。



決して裕福ではないけれど、貧しい思いをすることも無かった。



でも、家族3人で仲良く過ごせるあの時間が幸せだったんだって後に気がつくことになる。



ごくごく普通で平穏な暮らしが続いたのも、私が小学校高学年の時まで。



お父さんとお母さんの喧嘩が増え始め、私が寝ている間にはリビングで怒鳴り声が飛び交い、一緒にご飯を食べることも減っていった。
< 28 / 53 >

この作品をシェア

pagetop