Lazy President
…しょうがない、濡れて帰ろう。
今日は天気予報を見る余裕もなかったから、置き傘も持ってない。
この時期なら、家に帰ってお風呂に入れば風邪だけは免れるはず。
眠気と格闘しながら下駄箱に向かい、ローファーを履いてから一気に外へと駆け出した瞬間に後悔した。
な、なんか寒くない…!?
曇ってきたことで気温が下がったのか、日中よりもだいぶ冷え込んでいる。
雨は冷たいし大粒でバチバチ肌にあたって痛い上、目に水が入ってくるから視界がぼやけて走りにくい。
それでも迷惑にならないように全力疾走していたら、ちょうど校門のところに差し掛かったところで。
「ぅわっ…!?」
思いっきり足を滑らしてしまった。
やばっ…滑る…!!!
自分の体が後ろに傾くのを感じつつ、もうどうしようもできないと悟った私は目を瞑って痛みに備えたけれど。
「っなにしてんのドジ結羽。焦るでしょ、バカ」
聞き覚えのある甘い低音が耳元に落とされ、誰かに抱きとめられていた。
「っえ…?」
こ、この声って…。
「久しぶり、って言っても一日経ってないか。まさかすっ転んでるとは思わなかったけど」
「せ、芹くんっ…!?」
「そー。芹くんですよ」