地獄から救ってくれたのは極道の人達でした。【長編】
桃子はこっそりいろんな写真を撮っていた。
何気ない日常を。いつも通りの日常を。
よく見ると、桃子が写っているもの一枚しかなかった。
それはそうだろう。撮っていたのは桃子自身なのだから。
そのたった一枚の、桃子とみんなが写っている写真を黒神達は印刷して、大切にしていた。
ただ、カメラを黒神に渡したのでその写真を桃子は持っていなかった。
癒しが欲しい時にみんなはそれを見るようになっていた。
夢の国で撮った、桃子との写真を、みんなはそれぞれデスクの上に飾っていた。
そこに書類を届けにきた部下は、そのデスクの上にある写真立てを見つめる。
こちらからは中身の写真は見えず、写真立ての後ろしか見えないのだが。
その写真立てを見ながらふと思う。
あの頃は楽しかったなと。