地味子は腹黒王子に溺愛され同居中。〜学校一のイケメンが私にだけ見せる本当の顔〜

林間学校










林間学校


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瑠依先輩との出会いから早くも1ヶ月が経過。




聖那さんと牙央くんの睨み合いに瑠依先輩も参加し、とても疲れ……コホン、今まで以上に賑やかな日々を送れています。




そして今日はというと。




急ですが、蒼穹学園ならではの一大イベント、1・2学年合同の林間学校が始まります!




というか、もうバス移動が終わり、今は険しい山道の前に立っています。




この山道を登り、山頂にある施設に泊まるらしい。




他にもみんなで料理を作ったり、キャンプファイヤーをするみたい。




キャンプファイヤーでマシュマロも焼けるかなあ?




ふふ、楽しみ……。




すると。




「優羽お前、今スイーツかなんかのこと考えただろ……」




「えっ、なんで分かったの!?」




「ふっ、顔でバレバレなんだよ」




「うっ……」




ワクワクしていると、牙央くんにスイーツのことを考えているのがバレてしまった。




私ってそんなに顔に出てるのかな……?




自分では分からないから変な顔してないか不安だよ……。




するとそこで、山頂にある施設にたどり着くための登山開始の合図があった。




登山開始とはいうけど、実際登山ほど時間はかかならくて、ハイキング気分で楽しめばいいらしい。




仲のいい人と一緒に登ってもいいことになってるから、牙央くんや詩乃ちゃんたちと一緒に登ろうっ。




聖那さんは……。




と2年生が集まっている方に目を向けると、たくさんの女の子に囲まれている聖那さんの姿が。




そうだよね、瑠依先輩も囲まれてるし……諦めよう。




「牙央くん、詩乃ちゃん、一緒に行こうっ!」




「ああ」




「でも優羽、生徒会長と一緒に行かなくていいの?」




「うん、あの通りだから……」




女の子に囲まれている聖那さんを指さしながら言う。




「あ〜……ね、じゃ、私らで行こっか」




「うんっ」




そうして、険しい山道へ足を踏み入れた。




登り始めて10分。




「はぁ……はぁ……」




はやくも、体力の限界です。




「おい優羽、大丈夫か?」




「優羽1回水飲も?」




「う、うん……ありがとう……」




私が運動音痴なのは分かってるけど、ここまで体力なかったっけ?




まだ数百メートルなんですけど……?




登山を開始したのが9時半で、山頂には10時半までに到着しないといけない。




このペースで行くと絶対間に合わない。




支給されたペットボトルのお水を2口飲んで言う。




「牙央くん、詩乃ちゃん……このまま私に合わせてると、2人まで間に合わなくなっちゃうから、先に行って?」




私の言葉に2人は心配の目を向けてくる。




「優羽、そんなことできないよ。それにここは山道だし……危ないよ」




「そうだ。何かあってからじゃ遅せぇんだ。俺らがいなかったら優羽に何かあっても助けてやれねぇだろ?」




「2人とも……」




2人の温かい言葉に胸がじ〜んとなる。




でももしかしたら、遅れてしまったら成績に影響があるかもしれない。




2人とも勉強を頑張ってきたのに、私のせいで悪い評価をされるなんて、怪我よりそっちの方が絶対にいや。




私も成績は落ちたくないけど、この体力じゃどうにもならないし……。




「私のせいで2人が遅れるのは嫌なの、お願い」




そう言うと、2人は渋々といった感じで了承してくれた。




「もうっ、そこまで言われたら断れないじゃんっ!何かあったら絶対電話してきてよ?」




「うん、約束っ!」




「優羽、今回だけだからな。あ、荷物は俺が先に持ってっとくから、それ貸して」




と言って、私のリュックを持ってくれる牙央くん。




「ありがとう、牙央くん……」




「怪我して帰ってきたら許さねぇからな?」




「う、うん……」




許さないって……何されるんだろう?




「じゃ、またあとでな」




「上で待ってるね、優羽」




「うんっ!」




そう言って手を振り、2人とは一旦お別れ。




よ〜し、ここからは1人だけど頑張るぞっ!




そこから更に20分ほど歩いた時。




道に喋りながら座っている3人の女の子が。




「あ、来た」




「遅すぎじゃん?」




そう言っているように聞こえたんだけど……気のせい?




3人の邪魔にならないように通ろうとした時。




足を引っかけられて、コケてしまった。




「うっ……」




「ねえ聞いた!?うっ、だって!」




「マジ笑える」




「ど、どうしてこんなこと……」




そう言うと、キッと鋭い目付きで私を睨んだ3人。




こ、怖い……っ




「どうして?そんなの、あんたが神代くんや弓波くんにベタベタくっついてるからでしょ!?」




「自分の姿鏡で見たことないの?神代くんたちはあんたなんかが近づいていい人じゃないの!」




「首席だからっていい気にならないで。ほんっと目障りなんだけど」




「っ………」




私が、2人に近づいたから、こんなことをするの……?




私は、近づくことも許されないの?




そう思うと、視界が涙でぼやけてきた。




泣いちゃダメ、私……!




もう行こう、と立ち上がり、足を1歩踏み出した時。




「いっ………」




さっき引っかけられた右足に激痛が走った。




捻挫でもしちゃったのかな……?




再びしゃがみ込んだ私を嘲笑う女の子たち。




「あっ、こいつ足ヤったんじゃない?」




「ふっ、いい気味」




ドクン、ドクンと心臓が嫌な音を立てる。




誰か、助けて……!




そう心の中で強く願った時。




「……なにやってんの」




声の聞こえた方を向くと、そこには瑠依先輩が。




瑠依先輩は私の方に駆け寄ってきてくれた。




「瑠依先輩、どうして……?」




「俺登山とかめんどいし、ゆっくり行ってたら優羽がこんなことになってた。もう大丈夫だから」




そう言って、私に自分の上着をかけてくれる。




でもその次の瞬間には、そんな優しい瑠依先輩はどこかに行ってしまっていた。




「ねぇ、これやったのあんたら?」




そう言っている瑠依先輩の瞳は、さっきの女の子たちの目付きに負けないくらい鋭く、怒りが見えた。




瑠依先輩、こんな顔もするんだ……。




女の子たちは、普段眠そうにしている無気力な瑠依先輩とは全く異なる姿に、少し仰け反ってしまう。




「るっ、瑠依く……」




「名前で呼ぶの許可した覚えないんだけど?」




「ひっ……す、すみませんでしたっ」




女の子たちは一目散に逃げていった。




たったあの言葉だけで……すごい……。




瑠依先輩は、去っていった彼女たちの姿を見終えると、しゃがんで私の心配をしてくれた。




「優羽、大丈夫?」




「あっ、はい、瑠依先輩のおかげで……って、私も名前で呼んじゃってて、すみません……」




惺蘭先輩には、1か月前生徒会室に行った時に多分許可して貰えたんだけど、瑠依先輩からは許可して貰ってないし、私もさっきの女の子たちと同じだよね……。




そう思っていたけど、瑠依先輩は私にふわっと優しく微笑んで。




「ううん、優羽は特別だから、大丈夫」




とく、べつ………私が?




前も私のことを面白いって言ったり、瑠依先輩の考えてることはよく分からない……。




でもお礼はしておかないと。




「ありがとうございます、瑠依先輩っ」




「っ………君、そういうとこあるよね……」




「えっ、私何かしちゃいました!?」




「うん、すごいダメージ負った」




な、何が原因か分からないけど……




「す、すみませんっ!」




「ふ、やっぱり面白い」




「……??」




本当に、瑠依先輩の考えていることは分からない。




瑠依先輩は私に手を差し伸べてくれた。




「行こう」




「はいっ!あっ、痛……」




そうだった、私足痛めてたんだった……瑠依先輩と話してたらすっかり忘れちゃってた。




瑠依先輩は私の声に反応する。




「痛い?……もしかして、さっきの奴らがやったの?」




「あ、はは……でも、鈍臭い私も悪いので……」




「何言ってるの、優羽は全然悪くない」




その言葉に心が軽くなる。




牙央くんに怪我したら許さないって言われたのに、どうしよう……って、今はそれよりもここからどうやって山頂にたどり着くかを考えないと!




そう思い、思考を巡らせていると。




「優羽、乗って」




そう言いながら、瑠依先輩がしゃがんだ。




もしかして、おんぶ……?




「いっ、いえ、そんなこと出来ません!まだ山頂まで半分あるのに、私を背負ってだなんて……」




「大丈夫。運動はめんどくさいけど、苦手じゃないから。それに、ちょっとくらいカッコつけさせてくれてもいいんじゃない」




「……!ふふ、じゃあ、お願いしますっ」




私は瑠依先輩に軽々おんぶされた。




その時。




「ねぇ、ちゃんとご飯食べてる?」




「?はい」




って瑠依先輩が聞いてきた理由はなんだったんだろう?





そんなことを考えていると、あっという間にもうすぐ山頂につく頃合に。




瑠依先輩がふと尋ねてきた。




「……アイツらのこと、どうするの。言ってくれたらこっちで処分できるけど」




こっちっていうのは、多分生徒会のこと。




確かに悲しかったし、足は痛い。




でも……あの子たちの言ってることも分かる。




私なんかが近づいたから、嫌だったんだよね。




「いえ、私がいけないので。あの子たちには何もしてあげないで下さいね」




「……なんで君はそんなに他人に甘いの。歩けないくらい足痛いのは、アイツらのせいなのに」




さっき思ったみたいに自分が悪いからっていうのもあるけど、1番はこういうことに慣れてるからだと思う。




小学校の時のいじめと、中学校での陰口。




もう、慣れちゃった。




「慣れてるので、大丈夫なんです」




その私の言葉に、瑠依先輩は少し怒りながら言った。




「過去に何があったのか俺は知らない。でも、例え慣れてたとしても、それは大丈夫にはならない。大丈夫だって思い込んで、自分に言い聞かせてるだけ。俺は、それで知らないうちに自分を責めてる優羽、見たくない」




「瑠依先輩……」




「で、どうするの」




「……やっぱり、何もしてもらわなくて大丈夫です。今度また何かあったら、その時は考えるかもですけど……」




「そ……あ、着いたよ」




そこには、たくさんの蒼穹学園の1・2年生が。




私たちが最後かな……。




「あの瑠依先輩、ここまで本当にありがとうございました。このお礼はまた今度……」




「ちょっと優羽っ!どうしたの!?まさか怪我したの!?」




「っ、だから言ったろ!……あ、いや、置いてった俺が悪いな……」




私の声をかき消す勢いで飛んできた詩乃ちゃんと牙央くん。




「あっ……ごめんね、怪我しちゃった」




そしてこっそり、瑠依先輩にさっきのことは秘密にしてくださいね、と耳打ちする。




瑠依先輩もコクッと頷いてくれた。




「〜〜っ可愛いから許すけどっ!待ってる間私たちずっと優羽のこと心配してたんだから!」




「ほ、本当にごめんねっ」




「……で、なんで優羽が皇……瑠依センパイにおんぶされてんの?」




「あっ、えっとね、瑠依先輩は私が足痛くて歩けなくなってたら、ゆっくり来てたみたいで私を見て助けてくれたの」




「……君が例の幼なじみ?」




「例のってどういうことだよ」




「優羽とキスしたんでしょ」




「!?ななな何言ってるんですか瑠依先輩!?そ、そそそんなわけ……」




「ああ、しましたけど」




「えっ、ちょっと牙央くん!?」




なんで認めちゃうの〜!




瑠依先輩に牙央くんとのキスのことを知られているのを知り恥ずかしくなり、




「瑠依先輩っ、もう下ろしてもらって良いでしょうかっ……!?」




と言うと、瑠依先輩は。




「何それ、妬けるんだけど」




そして私を背中から降ろしたかと思うと、すぐに抱っこをして。




「わあ!?んっ……」




キスをした。




その様子を見ていた多くの生徒が声をあげる。




「キスの上書き。あれ、優羽顔赤いけど何かあった?」




い、や……今瑠依先輩がしたから……っ




こ、この先輩……危険!




詩乃ちゃんと牙央くんも開いた口が塞がらないようで。




「ち、ちょっと優羽っ。瑠依先輩にまで……っ」




「し、詩乃ちゃんっ」




「はっ……やっぱこのカッコだけじゃダメじゃねぇか。更に上書きしてやる。怪我して帰ってきたお仕置もついでにしてやる。優羽、こっち来い」




今は瑠依先輩の両腕に座るような形で抱っこされている私に、手を伸ばしてくる牙央くん。




上書きってことはまたキスするってこと!?




それにお仕置って……そ、そんなの無理だよっ。




かと言って瑠依先輩にずっと抱っこされたままなのも何されるか分からないしっ……。




でも逃げようにも抱っこされているから逃げれない。




どうすればいいの……!?




そう思っていると、またも生徒が声をあげる。




ああ、これからもっとややこしくなる……。




なぜなら。




聖那さんがこちらに向かってきているから。




誰か助けてよぉ……あっ、詩乃ちゃん!




そう思い詩乃ちゃんの方を見ると、そこに詩乃ちゃんはおらず、10メートルくらい離れたところにニッコリ笑顔の詩乃ちゃんが。




詩乃ちゃんは私と目が合ったら手でグッドを作った。




グッドじゃないよ詩乃ちゃん〜!




そんなやりとりをしているうちに、聖那さんは私のすぐ後ろに。




「瑠依、なんの真似だ?」




すぐ近くにはもう瑠依先輩と牙央くん、私以外いないから、いつもの口調で話す聖那さん。




「何って……そういうことじゃない?」




「チッ……優羽を離せ」




「でも足怪我してるし、あんまり動かしたら悪化するかもね」




「!……優羽、足怪我したのか……?」




「あ、はは……」




笑ってこの状況を早く終わらせようとするけど、聖那さんがそうさせてくれるはずもなく。




「っ見せて……、!」




酷く腫れあがった私の右足首を見て、聖那さんは目を大きく見開く。




そして小さく、ごめんと言った気がした。




「……分かった。瑠依、保健医の先生のところへ優羽を連れて行け」




あれ。




「分かった」




聖那さんが、目を合わせてくれない……?



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