キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
ここで ”‬キスマーク‪” を付けるほど私は独占欲に蝕まれていない。……はず。

なのに……

自分でも自分が上手くコントロール出来ない。

だって私今……、葵くんの胸板にそっと手を置いて、


……………………付けようとしてる。


こんな夕暮れ時の道端で。

人目も構わず、ただ自らから溢れ出る独占欲だけに身を任せて、溺れようとしてる。

「先輩…、どうぞ?」

促される視線に心臓がバクバクする。

ギュッ、と目をつぶった私。

首筋に吸い込まれそうになる唇を軌道修正して葵くんの耳元に移す。

「……自惚れないで」

それだけ言い放ち、私は葵くんをその場に置いて、スタスタと歩き出す。

危ない危ない。

正直内心とてもヒヤヒヤしていた。

あのまま葵くんに促されるまま付けていたら……、それこそきっと葵くんへの好意を認めることになりかねない。

そんなの絶対嫌……っ

「自惚れてなんていませんよ、もう…っ、先輩ったら酷いですねぇ」

困り顔で隣に並ぶ葵くん。

酷い、はどっちよ。

「それにしても先輩。今日の格好、素敵ですね」

「なっ、急に何!?​────わっ…」
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