キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
なのにイラッ、ともして感情がぐちゃぐちゃになってしまう。

「別に!私は最初から嫉妬なんて……!」

「してない…ですか? ……めちゃくちゃしてたじゃないですか」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

クスクス、と笑う葵くんに私が今日した妄想から何から何まで全て見透かされてしまった気がしてやり場のない感情に支配された。


***

「それより涼太くんから聞いたよ? もう…、勝手に着いてくるのやめてよね」

アパートの階段を登りながら、気を取り直して厳重に注意する。

「せっかくの千紗と2人でお出かけだったのに…」

「嫌、でした?」

「嫌、っていうか…、もうこれストーカーじゃん」

「好きな人と1秒でも長く一緒にいたい、って思うのは…、間違ってますか……?」

「うっ…」

騙されるなー…。

こいつはクズ!こいつはクズ!

「あぁー、もう!帰る!じゃあね!」

なんだか埒が明かない気がして玄関ドアに手を伸ばしたその時。

「好きな人…? なにそれ………」

背後から震えた声が聞こえて振り返ると見覚えのある女の子がこちらを見つめて立っていた。

あれ……、この子…。

あっ……、前、葵くんとここでキスしてた女の子だ…。
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