キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
今の私と葵くんの会話を聞いてたんだと思うけど、女の子の足元には次々に涙がこぼれ落ちていくのが見えた。

「葵…くん…、その人が本命なの…?」

縋るような目で葵くんに近づく女の子。

覚束無い視線を私と葵くん、交互に向けるやいなや明らかに女の子の顔つきが変わった。

ショックを受けている

そんな感じに見て取れた。

「ねぇ!そうなの!?」

葵くんに掴みかかる女の子の手がカタカタと震えているのがここからでも見えた。

「私…っ、大好きだったのに…」

女の子の口からポロッ、とこぼれ落ちたその言葉に、胸が締め付けられる。

私は……、葵くんがクズだって知ってる…。

でも葵くんが他の女の子とどういう付き合いをしていたかは知らない。

葵くんはただの遊びの範疇であったとしても、きっとこの子は…、葵くんに真剣だったはずだ。

「葵くんだって私が好きって言ってくれたじゃん……っ」

…………そっか。

そうだよ……。

葵くんってこういう人じゃん。

今は先輩先輩って、駆け寄って来てても、きっと私が葵くんに夢中になったら……、好きになってしまったら……最後、この子みたいに冷たく、あしらわれるんだろうな。

それでも、抜け出せなくなって縋ってしまうんだろう。

‪”‬好きになる‪”‬ってきっと自分が思う以上に複雑なことだろうから。

あぁ……。

そうだよ。
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