キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
どんどん地面に広がっていく血の海に焦りだけが募り、ポケットからスマホを取り出す。

しかしそれを制するように血だらけの手がこちらに伸びてきた。

「呼ば…ないでください……」

「なんで…っ、呼ばなきゃ……、葵くん…っ、死んじゃうじゃん…っ、」

いくらクズだからって死ぬなんて訳わかんないよ!

「もう……いいんです…」

「そんな…っ、諦めないでよ……!」

「…………せん、ぱい…」

覇気のない声を発した葵くんの目尻からは溢れ出すようにスー、と涙が伝っていっていた。

その姿に私も涙腺を刺激される。

「なに…………っ」

「僕……先輩と出会えて、幸せ、でした…」

こんなの……、

まるで最後に言い残した言葉を伝えているみたいだ。

「そんな…っ、最後みたいなこと言わないでよ!葵くんらしくないじゃん!死んじゃだめ……! だめだよ…っ」

「僕……、最低ですよね…」

「…っ、」

「分かってるんです…、自分が……クズだ、って…。でも​────」

途切れ途切れに聞こえる声に必死に耳を傾ける。

気が付いたら葵くんの手を強く握っていた。

「……先輩のことは………、、本気…だったんです」
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