キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
「どうでしたか? 僕の迫真の演技」

超ムカつくのに…っ、

なのに……、、

いつもみたくおちゃらける葵くんの姿に、なぜか鼻がツーン、とした。

怒りよりも上回るものがあったみたいで目に滲み始めた涙が私の視界をぼやけさせる。

「それで先輩。さっき僕のこと好き、って認めま────」

ーーパチン…!!!

思いっきり葵くんの頬にビンタして、堪えきれず、抱きついてしまった。

震える手を巻き付くようにして葵くんの首元に回し、嗚咽を漏らす。

涙がどんどん頬を伝っていった。

「…っとに!もう…っ!!海外のドッキリみたいなことやめてよっっ!!」

………………………………バカみたい。

1人でぎゃーぎゃー叫び散らかして……!

挙句の果てには……、あれ全部演技!?

私のこと本気、とか言ったのも演技…!?!?

全てに腹が立ってしょうがないのに、どうしようもなくこの胸の中が安心してしまう。

そしてどんどん自分から漏れ出す声が弱々しいものになっていった。

「驚かせないでよっ!!死んじゃうかと思ったじゃん……っ、ぐすん…っ」

ドクンドクン、と伝わってくる葵くんの鼓動が、涙を流す私を必死に宥めていくようだった。

「びっくりしたっ……、よかった……っ、あったかい……っ、よかった…」

葵くんから伝わってくる体温がちゃんとあることに安心して涙が止まらない。

「そんな​────…」

背中にゆっくりと葵くんの片手が回されてちょんっ、と控えめに触れた。

小さな声が鼓膜に届く。









「……………………………………泣くなよ」
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