キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
考えてみりゃ、先輩と涼太は動物園の時が初対面だったはず。

なのに、自己紹介すらしてなかった。

くっそ…。

委員会なんて聞いてねぇぞ。

巧妙に張り巡らされた伏線かよ。

「ちょっと、落ち着けよ葵!てかそろそろ体育館移動しねぇとやべぇって!」

あー、むしゃくしゃする。

なんでこいつが先輩と親しくなってんだよ!

***

「葵くーん! キャー!やば!超かっこいいー!」

体育の授業中、僕は安定に騒がれていた。

バスケでシュートを決める度に上がる悲鳴にも似たような声援。

しかしどれもがもうすっかり聞き慣れた褒め言葉であり、分かりきっている事実だ。

「葵くんっ!お疲れっ!これタオルだよっ」

「良かったら使って!」

別チームと交代しコートから出た直後、女が一目散に僕に駆け寄ってくる。

今日は他クラスと合同の体育だから何だかうるさい。

「……いらねぇ」

いつもなら貼り付けるはずの爽やかスマイルが貼り付けられず、素っ気なく返事をした僕は女の集団を抜ける。

「もう女落としはやめたのかよー?」

そんな僕の姿に横を歩く涼太が誰よりもはしゃぐ。

「本命が出来たから、的な!?」

「うるせぇ…!」
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