キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
***

放課後。

いつもみたく昇降口で先輩を待っていた。

今日はまだ……、一言も話していない。

いつもなら毎朝マンションの出入口で先輩を待ち伏せして一緒に登校していたが今日はそれをしなかった。

……というか出来なかった、の方が正しいかもしれない。

出来ることなら顔を合わせなくなかった。

なのに…、

くっそ……なんだよ、これ……。

朝は避けることで一生懸命だったのに、今は会いたくて仕方ない、とかマジでバカみてぇ……。

「えっ、葵くん?」

その声に壁にもたれかかっていた背を浮かし、顔を上げる。

先輩が困惑気味に僕を見ていた。

「…っ、」

僕の方…、見てる……。

先輩と視線が絡んで途端に体が重くなる。

なんだよ、これ……。

マジ意味分かんね。

ヨタヨタと先輩の元に向かう。

「どう……したの? え、私のこと待ってた? いや……違うか」

1人考えこむようにブツブツと口を動かす先輩。

……先輩のことしか待ってねぇよ。

「あー…、もう私のことは冷めた、よね? 好きとか言っちゃったし…、なんか、あれでしょ? 好きにさせたら満足ー、とか言ってたもんね」

遠慮がちな目で僕を見つめる先輩。

スー、と先輩のせっかくの気持ちが離れていくような気がして落ち着かない。

「じゃあ、私行くね……」

「まっ、待て…」
< 123 / 160 >

この作品をシェア

pagetop