キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
思わず立ち去ろうとした先輩の腕を掴んでしまった。

「え?」

パッチリと開かれた目がユラユラと揺れながら僕を見つめていた。

「葵くん……?」

先輩が……、

僕を………

ーー私も……っ、好きだよ…

ーー葵が好き……っ!

‪”‬好き‪”‬だと……、好意を持ってくれた。

好き、と言われたらポイする予定だった。

これでいいはずなのに……

これで終わり、でいいはずなのに……

この好意が、どうしても………







手放しがたい……。


「ごめん…、昨日のことやっぱ怒ってる? ほら…私ビンタ…しちゃったでしょ?」

ただ無言で腕を掴む僕を‪”‬怒っている‪”‬と捉えたらしい先輩。

気まずそうに視線をさ迷わせていた。

……違う。

そうじゃないのに。

「……別に。気にすんなよ」

‪”‬抱かれたい男No.1のこの僕の美しすぎる顔面を傷付けた責任、きちんととって下さいよ?‪”‬

いつもみたくそんな発言をしそうになる自分が、今日は急激に歯止めが掛かり、代わりにぜんっぜん僕らしくない言葉が飛び出してしまった。

無意味に近くの下駄箱に手を伸ばし、触る。

あれ…。
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