キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
#2 キミはクズ
【玲乃side】

夜22時過ぎ。

なんだか外の空気を吸いたくなってベランダに出た。

「ふぅー…」

手すりに軽く持たれて空を見上げる。

今日は星見えないなー…。

なんて思っていたその時だ。

「~……、~…」

隣から何やら声が聞こえた。

隣とベランダを区切る壁に足音立てず近づき、ゆっくり向こう側を覗き込んでみる。

「僕も、愛してますよ」

「…っ!?」

葵くんの姿が見えた。

スマホを耳に当て、誰かと会話中らしい。

私に聞かれていることなんて全然気づいていない模様だ。

「ほんとですよ? ラブホ、ですか? あはは、どうしようかな」

うわっ、超不健全な会話…!

何話してんのよ…。

次のデートの行き先ー、とか?

それにしても女の子側の提案があからさま過ぎる…。

ーー葵くん、結構女の子取っかえ引っ変えしてるんだってー

女を取っかえ引っ変え…。

あー…。

月曜になったら私のことなんて綺麗さっぱり忘れていてくれないかな。

クズ男に溺れるほど暇人じゃないから私!

そのまま向こうにバレないようにこっそり部屋に入り、慎重に窓を閉めた。
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