キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
***

週明けの月曜日。

目が覚めて、すぐ。

外から女の子の声が聞こえてきたので耳を澄まし、玄関に近づいた。

「私…っ、葵くんが好き……っ、んっ、はぁ…」

嫌な予感がした。

いかがわしい水音……。

激しい息遣い……。

ゆっくりとドアスコープに顔を近づけると、隣街にある学校の制服に身を包んだ女の子をギュッ、と抱き抱える葵くんの姿が写った。

2人は何度も何度も首を傾け、唇を重ね、熱い熱いディープキスを全身全霊で注ぎあっている。

朝から他人の家の前で何やってんのよ……!!

そう怒鳴りたくなるけど何とかこらえる。

私は直ぐに彼らから目を離し、玄関ドアにピタリと背を引っ付けた。

唐突に千紗の声が過ぎる。

ーー本命になれなくても、遊びでもいいからそばに居たいー、的な? どんどん沼にハマってくの。イケメンクズ男の特権だね

あの子……。

沼ってんのかなぁ……。

なんてことをふと思った。

***

「先輩」

背後から掛けられた声に思わず肩を跳ね上がらせた。

「ご一緒してもよろしいですか?」

どうやら待ち伏せされていたらしい。

マンションのフロアにある柱の影から制服に身を包んだ葵くんがひょこっと顔を出した。
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