キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
「先輩、耳が真っ赤ですよ?」

「……うっ、うるさい…っ、怒り、で真っ赤なだけだから…」

「本当は照れ、じゃないんですか?」

「違うから! 絶対違う! 自意識過剰過ぎ!」

「お褒めに預かり光栄です」

「褒めてないてないし!」

朝からヒヤヒヤドキドキさせられて最悪な気分だ。

まぁ思い返せば全部私の1人相撲な気がしないでもないんだけど…。

「はいはい。今度はなんですか」

しょうもない口論を終えたと思ったら、すぐまた何か言いたげに葵くんがこちらを見ていた。

そんなジロジロ見られるのは好きじゃない。

ため息混じりに見つめ返すと、悲しげな顔で葵くんが口を開く。

「おととい、どうして勝手に帰っちゃったんですか」

おととい……?

あっ…、そうだ、おととい……!!

「どうしてもこうしてもないでしょ! 散々人のことからかっといて!寝る、ってなんなのよ!もう二度と葵くんの家には行かないから!」

あの後、なんとかネクタイで拘束された手を解き、谷間で熟睡中の葵くんを起こさないように慎重に慎重に自分の家に帰った私!

おとといのことを思い出したらまた怒りが湧いてきた……。もうあんな思いは二度と御免​─────

「先輩…」
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