キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
葵くんが驚いたような顔をしてこちらを凝視する。

え、なに……。まさかまたパンダばらす、って言うんじゃ…、なんて考えが過ぎるが降ってきたのは予想だにしていなかった言葉だった。

「もしかして……その気にさせちゃいましたか?」

「はっ、はぁ!?」

「だってちょっと残念そうな顔してません?」

「してない!してない!あぁもう!」

話が全く通じない……!

そのまま恋人繋ぎをしていることすら忘れてスタスタと歩き出そうとしたその時。

「きゃっ……」

後ろからグイッ、と手を引かれ、そのまま吸い寄せられるようにして私はまた葵くんの胸に顔を埋めていた。というか埋めさせられていた。

包み込むように後頭部に手が添えられて身動きが封じられる。

「ちょっ…こんな道端でやめ​────」

「寝てしまって、すみませんでした」

「…っ、」

謝ったり……するんだ…。ちょっと意外……

まぁ悪気があった訳じゃないなら仕方な​いか、と思いかけたところだったが、数秒後にはそんな情はあっという間に吹き飛んでいた。

「女性をその気にさせておいて、僕は‪最低ですね」

「…っ!だから…っ!その気になんてっ、なってな……っ」

ギュッ、とさらに葵くんに抱きしめられる力が強くなる。
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