キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
まるで大切な人形みたいに強く抱き締められて葵くんの心臓の鼓動が鼓膜にダイレクトに届き始めた。

「……………寂しかったです」

「え?」

小鳥の鳴き声ぐらい、か弱い声色を出した葵は自信なさげに言った。

「起きたら先輩いなくて…、でも…先輩の香りはまだ部屋に残ってて…置いてけぼりにされた気分でした」

なに……いきなり…。

どうせまたなんか企んで​─────

ーーポタ…

え……

その時、肩に何かが当たったような気がして顔を上げると葵くんが涙を流していた。

「えっ…!? なんで泣いて……っ、」

「寂しかったんです…っ、ぐすん…っ」

なんだかその泣き顔は子供みたいで。

先程強く言い過ぎてしまった自分が申し訳なくなる。

「ごめん……って…」

ポロポロ涙を流す葵くんに戸惑ってなんて声をかけていいのか分からなくなる。

「うぅ……っ、うっ……」

「もう…泣くのやめてよ、ごめん、って……」

「すみません…っ」

ーーカプ…

「ひゃぁ……っ」

は!?

今こいつ…っ、何した!?
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