キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
「思わない思わない。私はただイケメンが見たいだけ」

そうだったそうだった。

千紗はイケメンが見たいだけだった……。

まぁ、千紗の気が済むまで付き合ってあげよう。

「もう満足しましたか?千紗さん」

目的を達成したであろう千紗の肩をため息混じりにトントン、と叩く。

「ちょっとー! 反応薄くない!? 玲乃もちゃんと見た!?」

「見た見た。かっこいいかっこいい。ほら! 時間いいの!? 部活!」

1ミリも見てはいないが適当に返し、スマホに表示された時間を見せた。

「うわ、やば! もうこんな時間!?」

千紗がバレー部で助かった……。

あのままあそこにいたら酸欠で死ぬとこだったよ。

千紗と別れたあと、パッパっ、と乱れた制服を伸ばし私は1人帰路に着いた。

***

「ぐでぇーーーーーーーーー…」

家に帰り、制服も脱がずしてリビングのソファにダイブ。

先程伸ばした制服は再び乱れていくが構わず全身の力を抜いた。

やっぱ家って落ち着くー!

靴下をポーイ、と投げ捨て、押し寄せてくる解放感に包まれながらゴロンと寝返りを打つ。

私みたいな運動音痴にはこのダラダラが身の丈に合っていて最高だ。

まだ時刻は11時30分。
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